研究内容

描画姿勢モデルの開発

 「画家はどのようにモノを捉えているのか」。空間を豊かに捉え、絵を描いたり立体作品を生み出したりする美術の専門家(熟達者)は、モノを観察して理解する力に優れています。特に目前のモチーフを鋭い観察力で捉え、画用紙に再現するデッサンスキルは、作品づくりの質を高める基礎的な力の一つです。画家がどのような見方で対象物や空間を把握しているのかに着目した実験の成果から、描画姿勢が重要な要素の一つであることが分かりました。そこで、本研究プロジェクトでは「描画姿勢モデル」の開発を行っています。描画に必要な「モノの見方」を姿勢から分析し、広く汎用できるモデルを作ることで美術の教育現場に活用することが目的です。

美術の学習場面における自己調整力の改善・向上を目的とした介入効果検証

 「絵を描くときの姿勢が良くない」「正しい姿勢を保つことができない」。学校現場を広く視察する中で、こうした子どもの描画姿勢にかかわる課題が見つかりました。首や腰に負荷がかかり、集中力を一定時間保つことができなかったり、身体に痛みを感じたりする等、重度の歪みが発生する場合もあります。描画をはじめとするものづくりの多くは、手指や腕などを豊かに動かしたり多様な道具を扱ったりする、身体性の高い行為、つまり運動の一種と考えられます。そのため、正しい姿勢を保ち場面に応じて力加減を調整する等、自己調整力を身に着ける必要があります。そこで、学校現場における姿勢改善を目的とした介入を行い、その効果を検証しています。

空間認識スキル向上を目指した視覚メディア教材の開発

 「対象の形状や比率を正しく捉えることができない」。空間認識スキルをめぐるつまずきは、美術の学習場面における主要なつまずき要因の一つです。また、図工・美術の指導者にとっても「教え方がわからない」「指導者としての技能に自信が持てない」等、困難感を抱くテーマの一つであり、今後は教育的支援の方法・効果的な指導法の検討が必要です。高度な描写力を有する専門家を対象とた、「描画技能の巧みさ」の向上を目指した描画指導ではなく、多くの技能に汎用可能な普通教育としての空間認識スキル向上を目指し、「描画のつまずき」解明に着目した描画指導法を視覚メディア教材として形にする取り組みを行っています。

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